老齢基礎年金が受け取れるのは65歳から、老齢厚生年金は生年月日により時期は異なります。しかし、60歳になれば、希望すると老齢基礎年金も老齢厚生年金も受給できます。
年金は原則と例外が複雑な制度です。老齢年金受給の参考としていただければ幸いです。
国民年金と厚生年金:公的年金は二階建て
公的年金は、国民年金と厚生年金(共済含む)です。
国民年金
国民年金は、厚生年金保険や共済組合加入者とその方に扶養される配偶者、自営業者、学生、主婦などを対象に基礎年金を支給する制度です。
被保険者種別 | 該当者 | 保険料納付 義務 | 納付方法 |
---|---|---|---|
第1号被保険者 | 自営業、学生等で日本国内に住所がある20歳以上60歳未満で 第2号・第3号被保険者でない方 | 本人や家族 | 納付しないと未納 (免除申請可能) |
第2号被保険者 | 厚生年金加入者(65歳以上は条件あり) | なし | 本人も収める厚生年金から納付 |
第3号被保険者 | 第2号被保険者の被扶養配偶者で20歳以上60歳未満の方 | なし | 配偶者の厚生年金から納付 |
第2号被保険者と第3号保険者は、自分で国民年金の保険料を納付しなくても納付したことになります。
第1号被保険者は加入月数を増やす目的で60歳後も加入し保険料を納付可能です。これを任意加入と言います。なお、加入できる上限があり、満額受給できる月数までとなります。
厚生年金加入者は、65歳以上70歳未満で、老齢年金や一元化前の退職共済年金等の受給権を得た方は第2号被保険者になれない。
厚生年金
厚生年金に加入義務のある事業所(適用事業所)に勤務する70歳未満で、常時使用される方は加入しなければなりません。
適用事業所とは、法人は常時使用される従業員は1名以上、法人以外は常時5人以上使用する事業所が該当します。国、地方公共団体や船舶も含まれます。
保険料は、事業主と被保険者が折半で入社した月から退職の前月まで事業主が納入し、未納はありません。
二階建て
20歳以上60歳未満に厚生年金に加入している間は、同時に国民年金の被保険者となり、保険料も同時に納付しています。老齢厚生年金の受給者は老齢基礎年金も合わせて受給できるのです。
基礎年金に厚生年金が上乗せされることから「二階建て」といわれます。
加入年金 | 20歳前 | 20歳から60歳 | 60歳から65歳 | 65歳以降 | 受給年金 |
---|---|---|---|---|---|
厚生年金 | 加入可 | 加入 (国民年金も納付) | 加入可 | 加入可 | 老齢基礎年金 と老齢厚生年金 |
国民年金 | 加入不可 | 強制加入 | ー | ー | 老齢基礎年金 |
国民年金 (任意加入) | ー | ー | 加入可 | 加入可 | 老齢基礎年金 |
一人一年金;65歳前と後の受給選択ガイド
年金は支給理由が同じ老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時受給可能です。
しかし、老齢年金と遺族年金や障害年金は、原則、同時に受給できません。ひとつの年金だけ受給する届を提出し、受給しない年金は支給停止とされる。
これが一人一年金の原則です。
65歳前の受給選択
65歳前は、支給理由が違う年金の受給権を取得した場合、いずれかひとつの年金を選んで受給しなければなりません。
「年金受給選択申出書」を提出し、選ばなかった年金は、支給停止されます。
65歳後の受給選択
65歳後は、老齢厚生年金と障害基礎年金、遺族厚生年金と障害基礎年金の種類の異なる組み合わせ受給が認められます。
「年金受給者選択申出書」の提出が必要です。提出した翌月から選択した年金が支給されます。
受給選択時の留意点
- 受給選択は、いつでも変更可能。届提出の翌月から変更されます。
- 選択する年金を決めるときは、年金額だけでなく、雇用保険、税金、医療保険、基金支給額、年金生活者支援給付金等々も考慮し実際に有利な選択をすることが重要です。
老齢基礎年金;受給資格と年金額
国民年金から支払われる老齢年金が、老齢基礎年金です。
受給資格
受給資格は、「保険料納付済み期間」と「保険料免除期間」、「合算対象期間」の合計が10年以上あることが必要です。
- 平成29年7月以前に受給開始年齢に達した方は、原則25年以上必要です。
- 10年以上25年未満の受給資格者が死亡した場合、遺族年金の資格要件に該当しないことがあります。
必要な資格期間は次の通りです。
- 国民年金保険料を納めた期間
- 国民年金保険料納付の免除が認められた期間
- 昭和61年4月からの国民年金第2号被保険者だった期間
- 昭和61年4月からの国民年金第3号被保険者だった期間
- 昭和36年4月から昭和61年3月までの厚生年金保険等の加入期間
以上の期間は、年金の計算額に算入されますが、年金の金額算出には入れないが、資格期間の合計には入れられる期間があります。カラ期間(合算対象期間)と呼ばれます。
年金制度に任意加入できたのにしなかったなどが理由の期間ですが、ここでは代表的な3つだけをご紹介します。詳細は、当事務所へお問い合わせください。
- 昭和36年4月から昭和61年3月までの厚生年金加入者等の配偶者(20歳以上60歳未満)が、国民年金に任意加入しなかった期間
- 昭和36年4月から平成3年3月までの期間、国民年金に任意加入しなかった学生(20歳以上60歳未満)だった期間
- 納付猶予、学生納付特例で納付猶予された年金をその後も納付しなかった期間
年金額
障害基礎年金の額 = 816,000円 X 納付月数 ÷ (40年 X 12月)
納付月数は免除申請した月もカウントされますが、全額免除以外の免除期間で免除されない部分は納付義務があります。
納付状況 | 納付月数/1月(h21.04~) | 納付月数/1月(~h21.03迄) |
---|---|---|
未納 | 0 | 0 |
納付済み (第1号非保険者) | 1 | 1 |
納付済み (20~60歳厚生年金加入者 =第2号被保険者) | 1 | 1 |
納付済み (20~60歳配偶者の扶養者 =第3号被保険者) | 1 | 1 |
全額免除 | 1/2 | 1/3 |
1/4免除納付 | 5/8 | 1/2 |
1/4免除未納 | 0 | 0 |
半額免除納付 | 3/4 | 2/3 |
半額免除未納 | 0 | 0 |
3/4免除納付 | 7/8 | 5/6 |
3/4免除未納 | 0 | 0 |
- 学生納付特例、納付猶予期間で、保険料を追納しなかった場合、年金計算の月数では、未納扱いとなります。
- 40年は国民年金に20歳から60歳まで加入できる方の上限=加入可能年数です。しかし、昭和16年4月1日以前に生まれた方は、加入可能年数は40年加入は不可能です。生年月日により加入可能年数は最短25年まで短縮して計算することになっています。
付加年金
通常の保険料(定額保険料)に上乗せして付加保険料(月額400円)を納付し、年金額を増やせる国民年金独自の年金です。自営業者等の国民年金第1号被保険者だけが対象。(免除申請者や国民年金基金加入者は除外。)
老齢基礎年金の受給権を取得した月の翌月から、月額200円支給されます。
老齢基礎年金が全額支給停止される場合は支給停止、受給者本人が死亡されると受給権は消滅します。
振替加算
振替加算とは、配偶者加給年金を受給する資格のある方の配偶者が65歳になった場合、その配偶者に加算されるものです。加算対象者に振り替えられることから付けられた名称です。
振替加算が支給される方は、相手方の配偶者に配偶者加給年金が支給されていた方で、ご自身が老齢厚生年・退職共済年金を受けている場合は、合計加入月数が240月未満であることが条件です。
生年月日に応じて額が異なり、昭和41年4月1日までに生まれた方が対象です。離婚しても亡くなる月まで支給されます。
老齢厚生年金の配偶者加給年金受給資格を得た時点で、その方の配偶者がすでに65歳になっていた場合は加給年金は加算されず、いきなり振替加算が支給されることがあります。
65歳前の特別支給の老齢厚生年金;受給資格と年金額
老齢厚生年金の支給開始年齢は本来65歳だが、改正前は60歳から支給開始されていたため、60歳から64歳まで特別に支給することになった。これが特別支給の老齢厚生年金。
男性は昭和16年4月2日、女性は昭和21年4月2日以降生まれの方が対象となり、60歳から支給される。誕生日が2年遅くなると
支給開始が61歳から64歳まで段階的に引き上げられる。
報酬比例部分と定額部分支給が支給される方
生年月日 | 支給開始年齢 | |||
---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 報酬比例部分 | 定額部分 | 老齢基礎・老齢厚生 |
昭和16年4月2日~ 昭和18年4月1日 | 昭和21年年4月2日~ 昭和23年4月1日 | 60歳 | 61歳 | 65歳 |
昭和18年4月2日~ 昭和20年4月1日 | 昭和23年4月2日~ 昭和25年4月1日 | 60歳 | 62歳 | 65歳 |
昭和20年4月2日~ 昭和22年4月1日 | 昭和25年4月2日~ 昭和27年4月1日 | 60歳 | 63歳 | 65歳 |
昭和22年4月2日~ 昭和24年4月1日 | 昭和27年4月2日~ 昭和29年4月1日 | 60歳 | 64歳 | 65歳 |
報酬比例部分が支給される方
生年月日 | 支給開始年齢 | |||
---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 報酬比例部分 | 定額部分 | 老齢基礎・老齢厚生 |
昭和24年4月2日~ 昭和28年4月1日 | 昭和29年4月2日~ 昭和33年4月1日 | 60歳 | ― | 65歳 |
昭和28年4月2日~ 昭和30年4月1日 | 昭和33年4月2日~ 昭和35年4月1日 | 61歳 | ― | 65歳 |
昭和30年4月2日~ 昭和32年4月1日 | 昭和35年4月2日~ 昭和37年4月1日 | 62歳 | ― | 65歳 |
昭和32年4月2日~ 昭和34年4月1日 | 昭和37年4月2日~ 昭和39年4月1日 | 63歳 | ― | 65歳 |
昭和34年4月2日~ 昭和36年4月1日 | 昭和39年4月2日~ 昭和41年4月1日 | 64歳 | ― | 65歳 |
65歳前の支給が亡くなる方
生年月日 | 支給開始年齢 | |||
---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 報酬比例部分 | 定額部分 | 老齢基礎・老齢厚生 |
昭和36年4月2日~ | 昭和41年4月2日~ | ― | ― | 65歳 |
受給資格
厚生年金の加入月数が1年以上あり、老齢基礎年金の受給資格を満たしていることが必要。
年金額
特別支給の老齢厚生年金は、65歳後の老齢厚生年金と違い、報酬比例部分の他に定額部分や加給年金も受給できる場合があります。また、長期加入者や障害者に対する特例支給があり、雇用保険との支給調整の対象となります。
報酬比例部分
厚生年金の年金額は報酬比例部分が基本の額であり、受給者の加入月数や加算対象者の有無により所定の額が加算されることになります。まずは、報酬比例部分の計算方法をご説明します。
平成15年4月に総報酬制導入の改正があり、平成15年3月4前までの期間と平成15年4月以降の期間を分けて計算し、合計して算出します。
報酬比例部分 = A + B
A = 平均標準報酬月額 X (7.125 ÷ 1000) X 平成15年3月以前の厚生年金加入月数
B = 平均標準報酬額 X (5.481 ÷ 1000) X 平成15年4月以降の厚生年金加入月数
- 「平均標準報酬」は賞与を含みません。平成15年4月1日から賞与も含めた「平均標準報酬額」に改正されました。
- 給付乗率(Aの7.125,Bの5.481)は、昭和21年4月1日以前生まれの方は異なります。
- 受給要件が①、②、③に該当するとき、厚生年金加入月数が300月(25年)未満の方は300月加入したとみなして計算。
- 共済組合加入期間のある方は、各共済加入期間とそうでない加入期間と別々に計算します。
定額部分
男性は昭和24年4月1日生まれまで、女性は昭和29年4月1日までに生まれた特別支給の老齢厚生年金受給者に支給されます。なお、長期加入者と障害者の特例に該当する方は、上記以降に生まれた方でも受け取ることができます。
計算方法をご説明します。
定額部分 = 1,701 円 X 1.000 X 厚生年金加入月数
注)昭和31年4月1日以前に生まれた方は、1,696円で計算します。
加給年金
厚生年金・共済組合等の被保険者期間の合計が20年以上ある方が、定額部分支給開始時点で、生計を維持する配偶者・子がいる場合に受給者本人の年金に加算されるもの。
- 支給停止;配偶者が被保険者期間が20年以上(中高齢の特例に該当者も含む)で老齢や退職年金の受給権を取得しているとき。障害年金を受けとる期間は配偶者加給年金は支給されません。
- 定額部分開始時点で、ご本人の被保険者期間が20年に達していなかった場合、達した直後の在職時改定あるいは退職時改定時点で加算対象者が居れば加算開始されます。
- 配偶者は内縁関係でも受給者に生計を維持されていた場合、加算対象配偶者とされる場合があります。
- 胎児だった時点で受給者に生計を維持されていた子は、生まれた月の翌月から加算対象となる。
加算対象者 | 支給年額 |
---|---|
配偶者 | 234,800円 |
子(二人目まで) | 234,800円 (一人あたり) |
子(三人目以降) | 78,300円 (一人当たり) |
- 配偶者;65歳未満であること(大正15年4月1日以前生まれの配偶者を除く。)
- 子;18歳になり最初の3月31日までの期間内にあること。一定の障害状態にある場合、20歳未満であること。
在職者の年金額改定
特別支給の老齢厚生年金を受給していても厚生年金に加入するできます。加入月数を増やせば受給できる年金額も増えます。「平均標準報酬額が下がるから年金は増えない」と考えはマチガイです。
加入した期間が年金額に反映する条件や仕組みをご説明します。
改定方式名 | 対象となる老齢厚生年金受給者 | 改定の要件 | 改定時期 | 改定範囲 |
---|---|---|---|---|
退職時改定 | 退職者 (厚生年金資格喪失者) | 退職して1か月経過 | 退職の翌月 | 退職までの 未改定期間 |
- 退職したが1か月以内に再度厚生年金に加入した場合、退職時改定は行いません。
在職老齢年金と長期加入者・障害者の特例
特別支給の老齢厚生年金の受給者が厚生年金に加入した場合、老齢厚生年金と給与・賞与額の合計額により年金の一部または全部が支給停止されることがあります。このような支給調整を在職老齢年金といいます。
調整は月毎に行いますので年金は「基本月額」、給与・賞与は「総報酬月額相当額」とし、この合計額が50万円を超えると調整対象とされます。
基本月額 = 報酬比例部分の月額 (加給年金は除きます)
総報酬月額相当額 = (対象となる月の標準報酬月額) + (対象となる月以前1年間の標準賞与額の合計) ÷ 12
支給停止調整変更額が50万円となり、計算式は、基本月額−(基本月額+総報酬月額相当額−50万円)÷2
在職老齢年金による支給調整(停止)額 = 基本月額 + (総報酬月額相当額 ー 50万円) ÷ 2
調整額を基本月額から差し引いた額が支給され、調整額>基本月額の場合は全額停止となります。
- 厚生年金基金加入期間がある方は、基金に加入しなかったとみなして計算した額から基本月額を計算します。
- 国と共済組合等、複数の老齢厚生年金を受給している場合、合わせて支給調整額を計算しません。個々の老齢厚生年金額に応じて按分した額をそれぞれ支給調整します。
- 在職による支給停止は50万円を超えている月が対象。従って、総報酬月額相当額が低くなる(変更)と停止はなくなります。変更した翌月から支給停止額が変わる。退職すれば同様にその翌月から。(退職しても同じ月に再度厚生年金加入した場合は除きます。)
長期加入者の特例
厚生年金加入期間が44年以上ある方の特例支給。
本来の受給開始年齢から、特例として報酬比例部分の他に定額部分も支給され、加給年金も対象者があれば加算されます。
- 厚生年金に加入していないことが条件。加入すると定額部分は支給停止となる。
- 共済組合の加入期間とそうでない厚生年金加入期間とは合算できません。
- 在職老齢厚生年金で44年到達した場合、到達した翌月から特例支給される。
障害者の特例
年金の障害等級の3級以上に該当する状態にある方の特例。
支給内容は、長期加入者の特例と同じ。
- 厚生年金に加入していないことが条件。加入すると定額部分は支給停止となる。
- 障害年金受給者は、本来の支給開始年齢から特例支給となる。そうでない方は、該当した翌月から支給開始。
- 障害年金の保険料納付要件を満たさなくてもよい。その後、障害状態確認(更新・再認定)はなく、悪化しても金額は変わらない。
雇用保険と年金の支給調整;押さえておくべきポイント
65歳前に老齢厚生年金を受給している方が、雇用保険の給付を受け取ると年金の一部または全部が支給停止されます。
基本手当(失業給付)
ハローワークで求職申込みを行うと、所定の期間、加給年金も合わせた年金の全額が支給停止される。
所定の期間とは、求職申込みをした日の翌月から受給期間満了した日の翌日の月または最終失業認定日があった月まで。
- 基本手当を受けた日が1日もない月。約3か月後にその月ひと月分が支給されます。
- 休職申し込み日によって年金の支給停止月数に違いが出ます。基本手当を受けた日が1日でも年金は全額停止されるからです。このような不公平を解消するため、失業保険の給付を受け終わった日または受給期間が経過した日以降に「事後清算」することになっています。
高年齢雇用継続給付金
60歳以上65歳未満の雇用保険加入者に、最大で賃金額の15%の額を雇用保険から給付金が支給されます。支給要件は以下の通りです。
- 雇用保険の加入期間が5年以上あること。
- 賃金額が60歳になった時点の75%未満となったこと。
年金受給中で厚生年金に加入している方が高年齢雇用継続給付を受けると、標準報酬額の6%を上限に支給停止されます。
65歳後の老齢厚生年金;受給資格と年金額
厚生年金加入期間がひと月以上あれば老齢厚生年金を受給できます。
老齢厚生年金の受給資格
老齢基礎年金と同様の資格期間要件を満たしていることが必要です。
「保険料納付済み期間」と「保険料免除期間」、「合算対象期間」の合計が10年以上あることが受給資格要件です。
年金額
老齢厚生年金(65歳後)は、報酬比例部分、対象者には加給年金、経過的加算が支給されます。
報酬比例部分
特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分をご覧ください。
加給年金
厚生年金・共済組合等の被保険者期間の合計が20年以上ある方が、65歳到達時点で、生計を維持する配偶者・子がいる場合に受給者本人の年金に加算されます。
- 支給停止;配偶者が被保険者期間が20年以上(中高齢の特例に該当者も含む)で老齢や退職年金の受給権を取得しているとき。障害年金を受けとる期間は配偶者加給年金は支給されません。
- 65歳到達時点で、ご本人の被保険者期間が20年に達していなかった場合、達した直後の在職時改定あるいは退職時改定時点で加算対象者が居れば加算開始されます。
加算対象者 | 支給年額 |
---|---|
配偶者 | 234,800円 |
子(二人目まで) | 234,800円 (一人あたり) |
子(三人目以降) | 78,300円 (一人当たり) |
- 配偶者;65歳未満であること(大正15年4月1日以前生まれの配偶者を除く。)
- 子;18歳になり最初の3月31日までの期間内にあること。一定の障害状態にある場合、20歳未満であること。
経過的加算
20歳前や60歳後に厚生年金加入した場合、老齢基礎年金の額計算から除外されることになります。そのため、65歳後に次の計算式で算出された金額が加算されます。これが経過的加算です。
計算式={定額部分(1,701円 X 1.000 X 被保険者期間の月数)} ー 厚生年金加入していた期間内で受け取れる老齢基礎年金額
在職者の年金額改定
老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金も同じ)を受給していても厚生年金に加入でき、加入月数を増やせば受給できる年金額も増えます。平均標準報酬額が下がるから年金は増えないと言うのは誤解です。
加入した期間が年金額に反映する仕組みをご説明します。65歳以降は、退職時改定の他に「在職定時改定」も行われます。
改定方式名 | 対象となる老齢厚生年金受給者 | 改定の要件 | 改定時期 | 改定範囲 |
---|---|---|---|---|
在職定時改定 | 65歳以上70歳未満の厚生年金加入者 | 基準日(9月1日)に被保険者 | 10月 | 基準日前の1年間 |
退職時改定 | 退職者 (厚生年金資格喪失者) | 退職して1か月経過 | 退職の翌月 | 退職までの 未改定期間 |
- 退職したが1か月以内に再度厚生年金に加入した場合、退職時改定は行いません。
- 70歳到達時の翌月から年金額が改定されます。なお、70歳になると厚生年金に加入できできなくなります。
在職老齢年金;65歳後の取扱い
65歳前に支給される特別支給の老齢厚生年金と同様に全部または一部が支給停止されます。説明はこちら。
雇用保険との調整はなし
65歳前の特別支給の老齢厚生年金のような雇用保険給付との調整はありません。
65歳後も失業保険を受け終わっていない場合、65歳になった翌月からは調整なしで失業保険と年金が受給できます。
繰上げ受給と繰下げ受給;メリットとデメリット
繰上げ
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、60歳になれば、本来の支給開始年齢よりも早く受給できます。これが「繰上げ受給」です。本来の支給開始年齢よりも早くもらうことになるのでひと月あたり、0.4%減額されます。
減額率 = 0.4% X (繰上げ請求した月から本来支給開始年齢までの合計月数)
繰上げ請求した翌月から(本来の支給額より)減額された年金が支給されます。
- 老齢基礎年金と老齢厚生年金は両方とも繰上げし、「どちらか一方だけ繰上げ」はできません。(特別支給の老齢厚生年金受給者が老齢基礎年金の繰上げは問題ない。)
- 老齢厚生年金が国と共済組合等と複数から受給できるような方は、すべての年金を繰上げしなければなりません。
メリット
繰上げ受給のメリットは、本来の受給開始年齢よりも早く受給できること。
これにより収入が増やせます。また、本来の受け取り方だと年金額が多く、年金の減額と納税額等とを比べた上で繰上げ受給を選択される方もいらっしゃいます。
デメリット
- 減額率は生涯変わらないこと。
- 取り消しはできないこと。
- 特別支給の老齢厚生年金(退職共済)の定額部分を受給できる場合、定額部分は支給停止されること。
- 寡婦年金は受け取れなくなること。
- 国民年金に任意加入や追納もできなくなること。
- 繰上げ請求後は、障害基礎年金の事後重症請求ができなくなること。
繰下げ受給
年金を増やす方法のひとつです。
65歳以降に受給できる老齢基礎年金、老齢厚生年金は、66歳以降に受給開始を繰下げることができます。これが「繰下げ受給」です。ひと月当たり0.7%増額され、生涯増額率は変わりません。75歳まで繰下げが可能となり、75歳上限で84%の増額となります。注)昭和27年4月1日以前生まれの方は、繰下げは70歳までとなります。
繰下げ上限年齢に達した場合、増額率も上限となり増えません。
繰下げ受給は、老齢基礎年金と老齢厚生年金のどちらか一つだけでも可能です。66歳になるまでの1年間年金を受給しないことが条件です。他の年金(遺族・障害)の年金受給権がある場合、繰下げは認められません。(例外;障害基礎年金(旧法含む)だけ受給権がある方は、老齢厚生年金だけは繰下げは可能。)
66歳以降繰下げ中に他の年金(遺族等)受給権が発生した場合、他の年金の受給権が発生した時点で増額率は決定され、以降変更されない。
66歳以降に繰下げ請求をする時点で、繰下げ増額した年金を受け取るか、繰下げ受給をしないで本来の受給開始時点に遡って一括受給するかのどちらかを選ぶことも可能です。
- 加給年金・振替加算は増額対象外。繰下げ中は加給年金・振替加算は受給できません。(経過的加算だけ増額対象)
- 繰下げ中に在職老齢年金により支給停止された老齢厚生年金額は、増額対象となりません。(全額停止だと増額はなしに)
- 75歳になった月とは、75歳の誕生日の前日のある月であること。
- 国の厚生年金と共済の厚生年金(退職共済)と両方受け取れる場合、両方とも繰下げしなければなりません。
- 基金から年金を受け取れる方は基金も繰下げしなければなりません。
メリット
年金を増額できること。
デメリット
受け取る年金額が増えることで、課税額、医療・介護保険料等の負担額が増えること、年金生活者支援給付金の対象外とされること等々、総合的な判断が必要となること。
特例的な繰下げみなし増額制度;実施の背景と詳細
令和4年4月に繰下げの上限年齢が70歳から75歳に5年間引き上げられたことで、令和5年4月より実施された制度です。繰下げの申し出をした翌月から増額された年金を受ける通常の繰下げ受給者には適用されません。
受給権発生時点にさかのぼり一括受給を選択する方に対する特例です。
一括受給を選択すると、5年前に繰下げしたものとみなして増額した年金の一括受給を認め、繰下げの翌月以降も同じ率で増額された年金を支給されます。
70歳以降に受給権発生時点にさかのぼり一括受給を希望すると、時効で5年以上前の年金は時効で支払いを受けられなくなります。時効で受給できなくなる年金を補填し、安心して75歳まで繰下げ制度を利用してもらえるように配慮した特例と言えます。
- 対象者は、生年月日が昭和27年4月2日以降の方、または受給権発生日が平成29年4月1日以降の方です。
- 一括受給すると、過去にさかのぼって医療保険・介護保険の自己負担額や保険料、税金等の調整が行われる可能性があること。
- 次のア、イ、ウのいずれかに当てはまる方には適用されず、過去5年分の(増額なしの)年金が支給される。
- ア 66歳に達した日(受給権発生日から起算して1年経過した日)以前に他の年金(遺族、障害)の受給権者だった場合
- イ 老齢基礎年金または老齢厚生年金の受給権発生日から起算して1年を経過した日後、特例みなし日(請求の5年前の日)以前に他の年金(遺族、障害)の受給権者だった場合
- ウ 80歳に達した日(受給権発生日から起算して15年を経過した日)以降に請求する場合
老齢年金の手続き;共通の流れと請求書
受給資格を満たした方が受給可能年齢になると、年金を受け取る権利は発生します。しかし、年金請求手続きを行わなければ年金は支給されません。受給可能年齢に達し請求しないまま5年経過すると、時効により過去に受給できる年金は受け取れなくなります。
請求書の事前送付
手続き漏れを防止するため、日本年金機構や共済組合等は、受給可能年齢前に裁定請求書をご本人宛に送付しています。
受給する年金 | 請求書 | 送付時期 |
---|---|---|
特別支給の老齢厚生年金 | 緑封筒入り A4サイズ | 受給可能年齢 の3か月前 |
老齢厚生年金と老齢基礎年金 (特別支給の老齢厚生年金を受けていた方) | ハガキ形式 (注) | 65歳誕生日の 前月末日 |
老齢厚生年金と老齢基礎年金 (特別支給の老齢厚生年金の受給資格のない方) | 緑封筒入り A4サイズ | 受給可能年齢 の3か月前 |
老齢基礎年金のみ | 緑封筒入り A4サイズ | 受給可能年齢 の3か月前 |
- 特別支給の老齢厚生年金と老齢厚生年金は別の年金です。自動的に継続支給はされません。65歳時点で請求しなければなりません。手続きをしないと年金が支給されなくなります。
- 65歳後の老齢厚生年金と老齢基礎年金の請求忘れ防止策として、数か月後に確認書類を送付しています。
- ハガキ形式の請求書が送付されない場合もあります。特別支給の老齢厚生年金の請求手続きを65歳到達直前に行った場合などです。
手続き窓口
年金加入状況による手続き窓口は次のようになります。
年金加入状況 | 手続窓口 |
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厚生年金(旧船員保険含む)のみ | 年金事務所 |
年金加入制度が混在 | 年金事務所または 共済組合 |
単一共済組合のみ | 共済組合 |
国民年金の1号被保険者のみ | 市区町村の窓口 |