年金を受給されていた方や年金の請求手続を済ませた方が亡くなると、未払いの年金が生じます。これが未支給年金と呼ばれ、亡くなった方の代わりに遺族が受け取ることになるのです。
未支給年金が発生する理由
未支給年金が生じるのは、年金が「後払い」となっていることが原因です。年金は、受け取る権利(受給権)が発生した月の翌月から支給がはじまり、亡くなった日のある月まで支給されます。
年金は日割りではなく、月単位で支給されます。そのため、月の初めに亡くなられても、月末に亡くなる場合でも、受け取れる月数は同じです。
年金が実際に振り込まれるのは偶数月の15日に前の2月分が支払われます。2月15日に支払われるのは、前年の12月と今年の1月分、4月15日は、2月と3月分、6月15日は4月と5月分・・・・・・。です。
15が休日で金融機関の休業日に当たる場合、その日前の営業日に支払われます。なお、年金支給が決定した最初の支払いや事務処理上生じる調整支払いは、例外的に奇数月でも支払われます。
死亡日と未支給年金額の目安
死亡日 | 未支給年金月数 |
---|---|
奇数月(1日から末日) | 2カ月分 |
偶数月(1日から年金支給日前日まで) | 3ヶ月(注) |
偶数月(年金支給日翌日から末日まで) | ひと月 |
(注)死亡後に指定口座に振り込まれてしまった場合は、2ヶ月となることもあります。目安とお考え下さい。銀行への死亡の連絡は速やかに行いましょう。
未支給年金請求書と死亡届はセット
未支給年金の請求書は、複写式で年金受給者の死亡届も兼ねています。受理されると受給権は消滅処理されますので、次回の振り込みはありません。
未支給年金を受け取る遺族とは?
未支給年金を受け取れる遺族は、年金受給者や請求中だった方の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他3親等以内の親族となります。年金受給者が死亡した時点で、生計を同じく(生計同一要件)していたことが条件です。
対象の遺族で順番が上の人を優先します。たとえば、父母は子がいれば請求できません。子が何人もいて全員が生計同一要件も満たす場合、1名が代表で受け取ります。
生計同一要件とは
亡くなられた方と「生計を同じくする」とは、どのような関係なのでしょうか?
厚生労働省の通達を見てみましょう。
3 生計同一に関する認定要件
(1) 認定の要件
生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者に係る生計同一関係の認定に当たっては、次に該当する者は生計を同じくしていた者又は生計を同じくする者に該当するものとする。
① 生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者が配偶者又は子である場合
ア 住民票上同一世帯に属しているとき
イ 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
ウ 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき
(ア) 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
(イ) 単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき
(ア) 生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
(イ) 定期的に音信、訪問が行われていること② 生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者が死亡した者の父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族である場合
厚生労働省;年発第0323第1号
ア 住民票上同一世帯に属しているとき
イ 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
ウ 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき
(ア) 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
(イ) 生活費、療養費等について生計の基盤となる経済的な援助が行われていると認められるとき
生計を同じくするとは、「経済的な援助」と「定期的な音信、訪問があったこと」が必要です。別居していてもよく、経済的な援助は、現金だけでなく物的な援助も含まれます。
単身赴任、施設入所・病院入院、婚姻による別居でも、上記ふたつの関係性があればよいのです。
相続放棄した遺族でも、事実婚の配偶者でも未支給年金の遺族と認定される場合があります。
年金を返納させられることもあるようですが、私は大丈夫でしょうか?
死亡届の提出遅れや日本年金機構の情報連携システムによる死亡情報取得時点で、すでに次回の定期支払い作業が終了していた場合、死亡した月の翌月以降の年金が振り込まれることもあります。このようなケースでは過払いとなり返納義務が生じます。
偶数月死亡の場合に発生する可能性が高くなるようです。年金受給者死亡届の提出は、10日以内(国民年金加入だけの方は14日以内)に行うようにしてください。念のため、振込先への連絡・確認も行いましょう。
未支給年金の金額と税金について
未支給年金の金額は、亡くなられた方の年金額や未払いとなった月数によって違います。亡くなられた年度の年金額の12分の1~3月です。年金振込口座の通帳があれば、1回の振込額の2分の1に未払いの年金月数を乗じた額になります。
老齢年金(年金コード1150)の他に遺族年金や障害年金、企業年金、共済年金等も受給されていた方は、それらの年金も併せた額です。なお、年金証書に記載されている年金額は、受給権発生時の金額ですので現在の支給額とは違う場合があります。
50万円以上は課税対象
未支給年金は、一時所得とされ50万円を超えると確定申告が必要です。未支給年金の場合、受け取る遺族に経費は認められませんので支給額の控除もありません。(相続税の対象とはなりません。)
未支給年金の請求手続き
未支給年金の請求手続きは、亡くなられた方が厚生年金に加入されていた場合、最寄りの年金事務所で行います。
国民年金だけ加入された方は、市区町村役所で手続きが可能です。
共済加入者死亡の手続き先は複雑!
共済年金加入期間があったり、遺族共済年金や遺族厚生年金受給者だったりした場合、手続き先が複雑です。一覧表にしましたのでご確認ください。
加入年金 | 請求先 | 注意点 |
---|---|---|
共済組合&国民年金だけ | 共済年金は共済組合、 国民年金は年金事務所 | なし |
共済年金&厚生年金 | どちらでもよい | |
国家公務員共済だけ | 共済年金は国共済、 国民年金は年金事務所 | 死亡者が遺族基礎年金や遺族厚生年金受給者 であれば年金事務所でもよい |
私学共済だけ | 共済年金は国共済、 国民年金は年金事務所 | |
地方公務員共済だけ | 地方公民共済組合 | |
市町村共済組合だけ | 市町村職員共済組合 | |
公立学校共済組合だけ | 公立学校共済組合 |
* 上記の国民年金の加入期間には、厚生年金・共済組合加入(国民年金2号)期間、被扶養配偶者としての加入(国民年金3号)期間は除外しています。
必要な書類は何ですか?
役所で死亡の手続きをすると、担当が年金事務所に連絡、遺族年金支給の有無と必要書類を確認し、何を揃えればよいかを教えてくれます。
- 請求者の戸籍謄本または戸籍抄本
- 原戸籍(戸籍だけでは死亡者と請求者の関係が確認できない場合のみ)
- 請求者のマイナンバーカードまたは個人番号通知書(コピーも可)
- 死亡者の年金証書
- 死亡診断書(コピー可)
- 未支給年金の振り込みを希望される口座(ネットバンクも可)の通帳またはキャッシュカード(コピー可)
- 生計同一申立書(死亡者と請求者が別居している場合に提出する書類)
年金が振り込み可能なネットバンクは、ソニー銀行、楽天銀行、住信SBIネット銀行、イオン銀行、ジャパンネット銀行の5行です。令和2年3月31日現在。
* 死亡者、請求者の個人番号が日本年金機構に未登録の場合は次の書類も必要です。
- 請求者の住民票(世帯全員)
- 死亡者の住民票除票
未支給年金の請求書に記入する項目は多くないので難しい手続きではないと思います。
支給される時期はいつ頃ですか?
請求書が受理された日から3月後の15日です。
共済組合の未支給年金請求もある場合、更に1月以上日数が掛かる。
指定口座振り込み前にはがき形式での支給額案内が請求された方宛に送付されます。
生計同一関係の認定審査で疑問が生じた場合、受理された日から1月以内に年金事務所経由で書面による照会(追加資料提出等)があります。
- 年金は後払いだから受給者が亡くなられると未支給年金は発生するので手続きが必要。
- 別居していても経済的援助や定期的音信、訪問があれば請求できる。
- 手続き・書類作成は難しくないが、予約制で提出まで待たされたり、何度も出向かなければならなくなることがある。
- 未支給年金が50万円を超える場合、確定申告が必要です。